代表理事 ごあいさつ
近年日本社会は急速に在留外国人数が増加しており、異文化理解の重要性が増しています。異文化に関する情報に触れる機会は増加しているものの、一方では外国人排斥運動や、住民同士のトラブルなども増加しているという現実があります。多様性社会の実現を目指すためには、正しい情報を得ることで、自分と異なる価値観を理解することが重要です。
誰もが日常生活の中で繰り返し経験するのは「食べる」こと。「食」は気候・風土・歴史・民族の体質など多くの要素を含んでおり、長い年月をかけて文化、料理、伝統行事、生活スタイルとして形作られてきました。そのため、人や物が自由に行き交うグローバル化した現代でもなお、人々の生活の中にグローバル化せずに残っているのが「食」なのです。在留外国人を理解する上で彼らの「食」を知ることは、単に食生活を理解することだけではなく、価値観や歴史・文化を知ることにつながるのです。これは日常生活のみならず、自然災害の多い昨今、非常時の備えを考える上でも重要なことです。
一方、近年は日本国内でもアレルギーや体質、信条による食事内容の制限により、「食」を取り巻く環境に困難を感じる人も増加しています。古来より人と食事を共にする場面は、どの国や地域でも、そしてどの時代でも大切にされてきました。人と食事を共にすることは、心を育み、他者を思いやり、相手を理解し、人々の絆を深め、食文化を継承する等、多くの機会を生み出します。しかし、個々の人の持つ「食」を心身両面から理解すること、つまりその人の生き方の礎となる部分の理解なしには、人と食事を共にすることで広がる他者とのつながりが、むしろ疎外感や孤独感を強めることにつながるリスクにもなります。
これまで、研究・大学教育・出版物などの場を通して、このような問題に向き合ってきました。特に教育の場では、知識を伝えるのみならず、得た知識をもとに自分で考える機会を作ることにより、人は考えや行動が大きく変わることを実感してきました。そこで、より多くの人々に、より多くの場で、その意味を正しく伝え、共に考えていく機会を創出することが重要と考え、一般社団法人を立ち上げました。身近な「食」を学ぶことは多くの人を理解し、自分の世界を広げ、巡り巡ってそれは自分自身を知ることにもつながります。そのような機会を提供することで、誰もが自分らしく、そして他者を認めて共に生きていくことのできる社会作りに貢献していきたいと思います。
